まちのおとレポート

河原町団地を支える女性自治会長、川島要子さんにインタビュー

幸区河原町にある圧倒的な存在感を放つ「河原町団地」。総戸数約3600戸、15棟の建物からなる巨大なこの県営団地は、50年前に国立京都国際会館など日本建築史に残る名建築を手掛けた大谷幸夫氏の設計でもあります。
その河原町団地7・8・9号棟自治会会長および河原町連絡協議会事務局長であり、河原町地区社会福祉協議会にも所属している川島要子さん。自治会会長になって10年。PTA、自治会事務局から数えると25年もの間、地域活動に携わっていらっしゃいます。ボランティア歴まで数えれば40年というパワーの源は「五木ひろしの推し活」というお茶目な一面も。
築50年の県営団地ということもあり、住民の高齢化や外国人居住者も多く、数々の工夫を凝らした自治活動をされている様子をうかがってきました。

~会長になられた経緯は?~

前会長が途中で辞めることになり、代行という形で引き継ぎました。そこから10年務めています。現在は河原町団地にある7つの自治会をまとめる河原町連絡協議会事務局長でもあり、河原町団地全体でお祭りやバザー、運動会などを行っています。7つの自治会がまとまると大きな力となり、色々なことができています。

~現在感じている一番の課題はなんですか?~

県営住宅のため、60%は年配の方が住んでおり、若い世代は外国人が多くなっています。外国の方は生活様式が違うので、なかなかうまくいかないこともあります。例えばゴミの捨て方についても外国語のパンフレットを取り寄せ、わかっていただくよう工夫をしていますが、理解をするまではなかなか難しいと感じています。県の職員にも協力してもらい説明を行うようにはしているので、自治会には加入していただいていますが、役員をやっていただくまでは困難です。

~外国人の住民との生活様式の違いを感じているようですが、気を付けていることはありますか?~

積極的に声をかけ、隣近所で顔見知りになるよう工夫しています。せっかく同じ団地に住んでいるので、ここに住んで良かった、日本に住んで良かったと思ってもらえるよう、まめにコミュニケーションを取っています。いざという時には相談にきてくれるようにもなりました。いろいろなことに参加して楽しんでもらっています。
外国人の中には自治会を手伝ってくれる方もいました。馴染んでもらうことが大切なので、差別はしないよう心がけています。

~高齢世帯が多いとのお話がありましたが、何か対策はしていますか?~

どこにどういう人が住んでいるかはだいたい把握しています。方法は「普段からコミュニケーションをとること」です。一人暮らしの方は特に。
孤独死を防ぐため、ドアの内側にマグネットで貼れる連絡先を書いてもらう仕組みを、現在民生委員と協力して作ろうとしています。何かあった時、ドアを開けて救急車を呼ぶことはできても、連絡先がないと身内の人に連絡が取れずどうしようもなくなってしまいます。そのため、一人ひとりと対面しながら、孤独死を防ぐ方法として年末より始めました。
また、マスクやワクチンをしてない人がいるときには地域包括支援センターを頼りにするなど、様々な組織と連携しています。

コロナ禍で顔が見えなくなってしまうことが一番困るので、ゲーム大会は昨年も今年も行いました。顔を出さなくなってくる世代ですが、商品を用意して参加したくなるよう工夫し、住民の2/3の方が参加しています。くじを引くことは認知症の方でもできるので、参加していただくことで確認が取れるのです。

さらに、「貴婦人の会」と名付けた外カフェを始めて10年になりました。団地の通路でお茶会をしているので、防犯上のセキュリティにもなっています。暖かくなると年中楽しんでやっていますが、「あの人が入院された」などの情報をキャッチすることができます。

他にも健康体操を幸区で一番に始めたり、防犯カメラも神奈川県で最初に取り付けました。新しいアイデアを取り入れ、集合住宅だからできることを活かしていきたいと思っています。

~女性の自治会長はめずらしいですが、自身のやり甲斐やよかったと思うことはありますか?~

女性の自治会長はどうなのかとはじめは思いましたが、10年続いています。
最初の頃、女性はあまり認められてなかったので、男性の会長を動かすことは大変でした。まずは自分を知ってもらい、先輩が作ってくださった伝統を守りつつ「こういう考え方もあるよね?」と発言することで新たなアイデアを取り入れるようにしてきました。今では川島さんが言うなら良いんじゃないと認めてもらえるようになりましたが、そこまでなるのに4~5年かかりました。女性が活躍することを認められることは大変ですが、認められると忙しいです(笑) 。現在7自治会中女性の会長は1人ですが、副会長には女性が多く活躍し、女性の発想が活きていることがここの団地の特徴となっています。団地間の連携もとれているし、民生委員などいろいろな人の力を借りながらとても良い状態で活動しています。コロナ禍でも会議は欠かさず行っていました。公営住宅なのでできることは限られていますが、やりたいことはいっぱいあり、自分自身が楽しんでいます。

~今後、取り組んでみたいことはありますか?~

「孤独死を防ぐ」「楽しい場所をいっぱい作る」です。「あそこへ行くと良いね」と言ってもらえるものを作っていきたいです。
誰もが気軽に利用できる集いの場「河原町の陽だまり」が団地内にありますが、ここを利用し、社会福祉協議会で男性の一人暮らしの人に楽しんでもらう会食を月1回行っています。現在はお弁当を配っていて、次のお弁当は何にしようかと選ぶことも楽しんでいます。コロナが収まれば週1回カレーを食べる日を作りたいです。実現するためには自分がひいてはいけない!もう少し頑張りたいです。高齢者でも頑張っている人は若いです。
ちなみに、陽だまりの看板を現在、川崎市立川崎総合科学高校の生徒が作ってくれています。ボランティアの授業の一環として、行政の方が協力してくださいました。行政との連携も取るようにしていますし、高校生徒の世代交流も良いなと思っています。

~次世代の自治会のイメージや期待すること、または若い方へ期待することはありますか?~

自分の住んでいる所を理解して、楽しく人生を送れるようなことをして欲しいです。町内会と違い、集合住宅の場合は自治会の加入率が低いという問題はありません。
河原町の自治会はみんな一生懸命。仕事勤めをしていると難しいと思うかもしれませんが、引き継いでくれる人が出てきてくれるとうれしいです。

~感想~

人を知ることが好きで、子供の時から人に接してあげたい気持ちがあったと言う川島会長。そんな会長にとってのキーワードは「楽しむ」と「アイデア」。お弁当選びのような小さなことでも楽しんでしまう。貴婦人の会も楽しみながら防犯対策になる。楽しいからこそ長年に渡り続けることができ、自分に余裕があるからこそ人のために活動できるのだなぁと感じました。
五木ひろしの携帯待受け画面を見せながら、推し活話をキラキラと目を輝かせて話してくださる川島会長は、すてきな年齢の重ね方をしている女性だなぁと、人生の先輩としても真似をしたくなるような方でした。

 

・インタビュー:2022年3月
・レポート:中村圭子

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